■学名：Helichrysum italicum
■科名：キク科
■抽出部位・方法：花より水蒸気蒸留法にて採取。
■分布地域：主にコルシカ島、イタリア、バルカン半島、南仏などの地中海沿岸に自生。
– 永遠の花が紡ぐ、深い癒しと再生のアロマ –
ヘリクリサム精油は、「イモーテル（不滅）」の異名を持つ黄金色の花から得られます。ハーバルでスパイシー、ほんのり甘みを帯びた深い香りが、感情の滞りをそっと解きほぐします。肌の再生や傷跡ケアで知られる一方、心に静かな回復力をもたらす香りとしても高く評価されています。過去を手放し、再び立ち上がる勇気をそっと後押しするアロマです。
🧪 特性・有用性（科学＋感性のバランス）
- 🌿 傷跡・瘢痕形成サポート：皮膚組織の再生を促進し、傷跡や炎症部位を穏やかにケア
- 🌙 鎮静・ストレスケア：情緒的ショックやトラウマの軽減に寄り添い、安心感を導く
- 🩸 循環促進・うっ血緩和：血液やリンパの流れを助け、滞りを流す作用
🧭 歴史と伝承
ヘリクリサムの名はギリシャ語の「helios（太陽）」＋「chrysos（金）」に由来し、古代から"不滅の花"として神聖視されてきました。地中海地方では伝統的に打撲、腫れ、瘢痕に用いられ、特に戦士たちの治癒薬として重宝されてきた記録も。感情の浄化や魂の再生を象徴する香りとして、香水や儀式にも用いられてきました。
🌿 香りの特徴（スパイシーで温かみのある、再生の香り）
- 香調：ハーバルでわずかにスモーキーなスパイス調。花の甘さを背景に、深みのある香り。
- 印象：草原の陽だまりのような温かさと静寂。ややメディカルな印象を伴い、落ち着きと浄化を感じる。
- 心理的作用：怒りや悲しみといった強い感情を受け止め、心に穏やかさと回復力を与える。
🧪 主な芳香成分
α-ピネン（25〜35%）
・森林系の清涼感、松葉のような香り
・抗炎症、気管支拡張、集中力向上、免疫促進、抗菌
リモネン（10〜20%）
・柑橘系、爽やかで明るい香り
・抗不安、抗うつ、気分高揚、抗炎症・抗酸化、抗菌・抗ウイルス
パラシメン（5〜7%）
・スパイシーで温かみのある香り
・抗菌、抗カタル、呼吸器サポート
β-ミルセン（2〜10%）
・ハーバルでややスモーキーな香り
・鎮静、抗炎症、睡眠サポート、皮膚鎮静
サビネン（〜5%）
・スパイシーでウッディ、ややシャープな香り
・免疫強化、抗菌、抗炎症
β-カリオフィレン（〜10%）
・クローブ様のスパイシーでウッディな香り
・抗炎症、鎮痛、神経保護、カンナビノイド様作用
α-ツジェン（〜5%）
・ウッディでやや樹脂的な香り
・抗菌、防腐、皮膚保護
ボルネオール（0.5〜2%）
・樹脂的でややカンファー調、穏やかなウッディ香
・鎮静、抗炎症、皮膚再生促進、収斂作用、抗菌
ジケトン類（β-ジオン／イタリジオン）（微量〜10%）
・スモーキーでメディカルな香り、やや苦味を含む
・瘢痕形成促進、血腫抑制、血液凝固阻止、抗炎症、皮膚再生
α-テルピネオール（微量）
・フローラルでややウッディ、ライラック様の香り
・抗菌、鎮痛、鎮痙、抗炎症
インセンソールアセテート（微量）
・バルサミックで神秘的な香り、わずかに甘く深みのある樹脂調
・神経保護、鎮静、瞑想促進、情緒安定、ストレス緩和
リナロール（微量）
・フレッシュなフローラル、ウッディ、スパイシーな香り
・鎮静、抗不安、抗炎症、免疫調整
🌼 期待される作用と科学的信頼度
・皮膚ケア・再生促進作用
【期待される作用】瘢痕形成促進、皮膚細胞の再生、炎症鎮静、打撲・火傷の回復
【主な関与成分】β-ジオン（イタリジオン）、酢酸ネリル、γ-クルクメン
【エビデンス・出典】Helichrysum italicum essential oil: chemical composition and biological activities（Mediators Inflamm. 2014）、Essays on Holistic Aromatherapy（Dr. Malte Hozzel）、ヘリクリサム精油の瘢痕形成作用のメカニズム
【科学的信頼度】 ★★★★☆
・筋肉・循環サポート作用
【期待される作用】血腫抑制、血液・リンパ循環促進、筋肉痛・関節痛の緩和
【主な関与成分】 β-ジオン、酢酸ネリル、γ-クルクメン、α-ピネン
【エビデンス・出典】Helichrysum italicum: From traditional use to scientific data（J Ethnopharmacol. 2013）
【科学的信頼度】 ★★★★☆
・精神安定・鎮静作用
【期待される作用】ストレス緩和、情緒安定、トラウマケア、PTSDサポート
【主な関与成分】α-ピネン、酢酸ネリル、リナロール
【エビデンス・出典】香りの不安・ストレスへ及ぼす作用に関する研究方法の文献調査（アロマテラピー学雑誌 2024）、HELICHRYSUM / ヘリクリサム - Dr. Malte Hozzel
【科学的信頼度】★★★★☆
・消化器系サポート作用
【期待される作用】胆汁分泌促進、胃痙攣・腹痛の緩和、消化促進
【主な関与成分】酢酸ネリル、γ-クルクメン、リモネン
【エビデンス・出典】Helichrysum italicum essential oil benefits the skin, gut, heart & more（DrAxe.com）
【科学的信頼度】★★★☆☆
・呼吸器系サポート作用
【期待される作用】去痰、粘液溶解、咳・気管支炎の緩和
【主な関与成分】 α-ピネン、酢酸ネリル、β-カリオフィレン
【エビデンス・出典】Helichrysum: Essential Oil Benefits the Skin, Gut, Heart & More
【科学的信頼度】★★★☆☆
・気分高揚・リフレッシュ作用
【期待される作用】抑うつ傾向の緩和、前向きな情緒誘導、集中力回復
【主な関与成分】 α-ピネン、酢酸ネリル、リモネン
【エビデンス・出典】HELICHRYSUM / ヘリクリサム - Dr. Malte Hozzel
【科学的信頼度】★★★★☆
🔍 科学的信頼度の目安：
★★★★★：ヒト臨床試験での再現性が高く、複数の研究で支持されている
★★★★☆：動物実験やin vitro研究で強い支持があり、伝統的使用とも一致
★★★☆☆：基礎研究や伝統的使用に基づくが、ヒト試験は限定的
★★☆☆☆：初期研究段階、または伝統的使用に基づく仮説レベル
★☆☆☆☆：エビデンスが乏しい、または一部の報告に限られる
🏡 使用シーンと暮らしへの提案
・打撲・筋肉のこわばりに気づいた瞬間に
【使用例】希釈オイルで局所塗布／湿布として使用
【期待される作用】β-ジオンの血腫抑制・瘢痕形成促進作用により内出血や青あざの改善、筋肉の緊張を和らげ、循環促進による回復サポート
・感情的に落ち込んだ夜や静かな独り時間に
【使用例】ディフューザー／枕元アロマストーン／1％希釈のセルフトリートメント
【期待される作用】酢酸ネリルによる情緒安定・インセンソールアセテートによる安心感の導入、PTSDや悲しみ・怒りの軽減に伝統的に用いられてきた背景を活かした心のサポート
・季節の変わり目や気管支の違和感が気になるときに
【使用例】マスクやハンカチに1滴垂らして携帯／ミストスプレーで吸入
【期待される作用】α-ピネンやサビネンによる去痰・抗炎症・粘液排出促進、呼吸を整え花粉・風邪の時期の快適性を向上
・セルフケア時間に、肌を整える深めのケアに
【使用例】植物油で希釈しフェイシャルローション／スカルプマッサージ
【期待される作用】β-ジオンによる傷跡ケアと肌のターンオーバー促進、γ-クルクメンによる抗炎症・抗菌作用、頭皮環境の調整
🔔 使用上の注意
妊娠初期は使用を避ける。特にβ-ジオンなどのケトン類が含まれているため、胎児への影響可能性を考慮して慎重な判断が必要。
授乳中は医師または専門家に相談の上使用する。ケトン類は皮膚吸収されやすく、乳児への経皮的影響が懸念される。
6歳未満の子どもへの使用は原則避ける。芳香浴を行う場合も、極低濃度（0.2%未満）で短時間に留める。
高濃度での芳香浴は眠気や集中力の低下を引き起こす可能性があるため、運転・勉強・業務前の使用には注意する。
EU指定アレルゲン（リナロール、ゲラニオール、α-ピネンなど）を含むため、敏感肌やアレルギー体質の方はパッチテストを推奨。
抗凝血作用がある可能性が示唆されているため、ワーファリン等の血液凝固抑制剤を服用中の方は医師と相談のうえ使用する。
てんかん既往のある方への使用は控えることが推奨されている。β-ジオンなど一部のケトン成分が神経系に影響を及ぼす可能性があるため。
精油原液の皮膚塗布は避ける。常に植物油で1%以下に希釈して使用することが基本。
※本ページは学術情報に基づく一般的なアロマセラピー情報です。医薬的効能の断定や診断・治療の代替を意図しません。疾患や服薬中の方、妊娠・授乳中、乳幼児・高齢者への使用は、必ず専門家の助言を得てください。